経理部門の効率化が遅れている理由とは? - 効率化するメリットと具体的な方法を解説 -

2020/12/08渡邉 貴之リサーチ

img_accounting_research1.jpeg

経理業務の効率化で頭を悩ませる企業担当者も多いのではないでしょうか?中でも「入金消込業務」は多くの企業で行われており、効率化できれば経理部門だけでなく企業全体にも良い効果をもたらします。しかし、入金消込業務特有の問題点により、具体的な改善策を立てることが難しいと思われがちです。

本記事では、経理業務の中でも入金消込業務にフォーカスして、効率化が遅れる理由メリット、効率化のため方法について解説します。

経理部門の効率化が遅れている理由

img_accounting_research2.jpeg

経理部門の効率化が遅れている理由は以下のようなものがあります。

  • 経理の専門知識の必要性
  • 簿記などの専門資格の必要性
  • ルーティンワークによる多忙

経理には年間を通じて基本業務があり、「日次業務」、「月次業務」、「年次業務」に分かれています。そしてこれらの業務には、経理の専門知識が不可欠です。また、最近では経理業務にITツールを利用して管理する企業も増えています。例えば、経理業務のITツールには、エクセルや会計ソフトによる帳簿管理などがあります。これらのITツールは、使いこなすための知識を要します。そのため、一朝一夕にできることではありません。つまり、経理業務には専門知識がないと成り立たない場合が多いということです。

また、経理業務を行う上で必要なスキルがあります。それは簿記です。簿記は経理業務を行うためのベースとなる知識です。そのため、簿記は経理業務に欠かせないスキルと言えます。職場によっては簿記資格の取得まで問わないこともあるでしょう。しかし、資格を持っていることで仕事がやりやすくなるのは確実です。

経理業務は日々のお金の動きを把握し、記録することが主要業務です。そして、仕事の大半がルーティンワークで占められます。日々発生する膨大なルーティンワークはスピーディーに行わないと決められた時間内に終えることができず、ミスをすれば脱税を疑われたり取引先企業の信用を失うといった許されざる事態につながったりしてしまいます。それだけに、経理担当者のプレッシャーは相当なものであり、経理業務を確実に行うことは会社存続の生命線なのです。

いくつかあるルーティンワークで代表的なものに「入金消込業務」があります。入金消込業務とは、請求額と実際の入金額を照合する業務です。支払い期限までに請求額が入金されていなければ、取引先に督促をすることになります。

入金消込業務にかかる月間の平均時間は、企業規模が大きくなるほど増加傾向にあります。入金消込業務に月間500時間以上を費やすと回答する企業もあるほどです。

img_accounting_research7.png

img_accounting_research8.png

参考:中小企業庁 決済事務の事務量等に関する実態調査(2016)

入金消込は、膨大な時間と労力をもって行われるため、神経を使う業務にも関わらず、その負担は担当者に重くのしかかるばかりです。実に作業効率の悪い業務だと言えます。そして、業務過多な現場では、スキルアップや業務改善を考える暇もなく、常に手一杯な状態から抜け出せないことが大きな悩みなのです。

このような経理の実態を踏まえると、入金消込の効率化が実現すれば、経理業務全体の生産性向上につなげることができると言えます。

入金消込業務でありがちな悩み

img_accounting_research3.jpeg

入金消込業務でありがちな悩みには以下のようなことがあります。

  • 誤差が生じる
  • 入金漏れのリスク
  • 業務の属人化
  • 目視・手作業によるリスク
  • エクセルによる入金消込業務の問題点

入金消込業務は経理業務の中でも担当者の負担が大きく、ミスの許されない業務です。しかし、ミスを誘因する要素が業務に残る限り、担当者がプレッシャーを感じずに業務を遂行することは難しいでしょう。そのため、まずは入金消込業務に潜む問題点を洗い出し、その上でどのような対応策があるか検討することが大切です。

誤差が生じる

入金消込業務は、売掛金や未収入金など債権の勘定科目残高を実際の入金額と突き合わせて消去していく作業です。

誤差が生じる原因には、振込手数料が差し引かれた金額が入金されていること、経費や買掛金との相殺、まとまった金額の入金など様々あります。そして誤差を見つけた場合は、消込先を探すことや過不足の催促、繰越請求といった対応が発生し、終わらせないことには入金消込業務が完遂できません。

入金漏れのリスク

売買代金の請求権は民法上2年で時効を迎えるため、入金漏れが発覚しても期限を過ぎれば請求権を失ってしまいます。そのためこのような事態が起きてしまうと、企業にとって甚大な損失となってしまいます。また売掛金の未回収は決算上の数値に影響することから、経理担当者にとっては絶対に避けなければならないことです。

入金漏れがあると消込ができないために繰越請求をすることになれば、経理担当者にとって面倒な作業が発生します。前月の未入金額と当月の請求額がいくらなのかといった請求管理と消込作業という面倒な処理が必要になります。

業務の属人化

業務の属人化とは、業務内容が担当者以外に知り得ないブラックボックスと化してしまうことです。

経験豊富な経理担当者の場合だと、例えば前述の誤差問題があっても長年の経験で培った勘によって原因を見抜けるケースも多いですが、一方で経験の浅い新人では業務に不慣れなことや勘が備わっていないために、すぐさま入金消込業務をすることは不可能に近いのです。よって結果的に業務が一部の社員に集中するという事態、つまりブラックボックス化を招いてしまいます。

また、入金消込業務を長年担当してきた社員が休職や退職をして他の社員に業務が引き継がれた場合、その社員の経験が浅いと経理業務の遅滞や甚大なミスにつながるかもしれません。

ルーティンワークである入金消込は日次業務であり、またミスが許されずプレッシャーのかかる業務でもあるため、作業に追われて経理の仕事そのものを改善する余裕が生まれにくいのです。担当者による改善が無理であれば、周囲が乗り出しても業務内容の問題点を明確に把握できていないために改善できないといった事態になるでしょう。

目視・手作業によるリスク

企業によっては、入金消込業務を目視と手作業で行うケースもあります。月に数件~十数件ほどであれば手作業と目視によって業務を行うことも可能です。しかし、たいていの企業では数十件から数百件の処理を行うため、ミスを引き起こしてしまう確率が高くなります。

そして作業途中の確認を何度も挟まないといけないため、作業スピードが劣り非効率になります。さらに誤差や入金漏れがあればその都度確認作業が発生するため、より一層非効率になってしまうのです。

エクセルによる入金消込業務の問題点

今や、エクセルによる入金消込業務を行う企業は大多数あります。エクセルによって作業効率は格段に上がります。複雑な処理が可能なため、例えば、様々な条件設定による関数を駆使した計算やフィルタ機能による絞り込み、請求先別の入出金管理、複雑なコンピュータの操作を自動化する技術であるマクロ機能などメリットは多彩にあります。

しかし、複雑な作業を可能とする一方、その複雑さゆえに管理にはある程度のスキルと経験が必要になるという点はデメリットかもしれません。そしてスキルや経験のある人材は限られてくるため、業務の属人化を招くことにもなります。またエクセルを利用してもなお、データの入力作業やデータの突き合わせと消込作業は最終的に人の手によって行われるため、ヒューマンエラーを引き起こすことは十分に考えられます。

入金消込業務を効率化するメリット

img_accounting_research4.jpeg

入金消込業務を効率化により期待できるメリットは以下のようなものがあります。

  • 人件費の削減
  • ペーパーレス化
  • ミスの削減
  • リアルタイムでの経営データの見える化 

入金消込業務を効率化するメリットは他にもあり、それは企業ごとの特徴により異なります。まずは上記に挙げた代表的なメリットを知ることで、経理部門の業務効率化に対してさらに意欲的に取り組めるのではないでしょうか。

人件費の削減

入金消込業務の工程を会計システムで自動化することで、人件費を削減することができます。

例えば、特定の社員による業務の属人化という問題において、特定の社員以外でも業務遂行ができれば、経理部門内での共有化が可能です。その結果、従来の特定の社員に依存する業務体制が解消され、スピード感をもって対応することができます。

また業務効率を上げることは作業工数や残業時間の短縮を実現し、「働き方改革」をさらに推進するでしょう。

ペーパーレス化

紙に書かれた情報を電子化することで紙の使用頻度を低減させる、つまりペーパーレス化が実現できます。入金消込業務を含む経理業務に使われる主な紙は、領収書や請求書、見積書などです。

ペーパーレス化によってデータを電子化して管理するため、瞬時に必要なデータを取り出すことができます。また外部へデータを送る際には、メールでのやりとりが可能です。情報管理や共有が容易に行えることで、業務効率を向上させることにつながります。

さらにペーパーレス化の推進により、用紙やインクなどの印刷代、郵送費といったコスト削減にも好影響を与えてくれるでしょう。

ミスの削減

人の手によって行われる業務では、入力ミスや消込漏れなどのヒューマンエラーが頻繁に発生します。そしてエラーが発生すれば、目視の確認と訂正が必要になります。またエラーに気づけなかった場合は、売掛金の回収はおろか、会社の損失や取引先への信用失墜につながりかねません。しかしITツールや経理業務をアウトソーシングする決済代行サービスを利用することで、ミスを防止することができるのです。

リアルタイムでの経営データの見える化

経理業務は業務の属人化により業務内容が見えにくくなり、ブラックボックス化する傾向があります。そして、問題が顕在化しないことが効率化を阻む要因です。しかし経理システムの導入などで効率化すると、入金から請求までの作業を一元化でき、売上や受注推移をリアルタイムですぐに把握できるため、経営データを迅速に見える化をすることができます。

月次決算の早期化や企業の経営陣による素早い意思決定など、経営データの見える化によって企業の現状把握や経営判断に役立てられるでしょう。

入金消込業務を効率化するコツ

img_accounting_research5.jpeg

入金消込業務の効率化には、個人や部署レベルで行えることと企業で行えることがあります。企業全体における業務改善がすぐに実行できるとも限らないため、まずは身近でできることを見直してみることです。例えば、ITツールの活用で紙の利用を削減したり、二人体制などチェック体制を整えたりすることでミスを防止することができるでしょう。一方、企業レベルでは、会計システムの導入や業務効率が劇的にアップするデュアルディスプレイの導入などがあります。

入金消込業務を効率化するシステム

img_accounting_research6.jpeg

入金消込業務の効率化にはシステム導入が効果的です。代表的なシステムは、以下の通りです。

  • 会計ソフト
  • 入金消込自動化サービス
  • 決済代行サービス

会計ソフトとは、収支など企業全体のお金の流れを全て管理し、集計して決算書作成までを行うシステムです。会計ソフトには様々な仕様がありますが、オプションとして入金消込機能が付属しているものが多くあります。

また入金消込自動化サービスは入金消込の自動化に特化したサービスで、入金データと売掛金データを自動照合して入金消込業務を行ってくれます。

決済代行サービスは、請求から代金回収までの一連の業務すべてを代行するサービスです。外部の専門業者に業務を一括してアウトソーシングするため、自社に担当者を配置できない場合に利用するとよいでしょう。

入金消込業務を効率化するためのサービスを検討しているならば、手間が掛からず即効性のあるサービスがよいと言えます。
システムを導入すると、人為的ミスや未回収金の把握など、経理担当者の負担を軽減させられます。ただし、導入に際して以下のような注意点があります。

  • 運用のビジョンを想定する
  • 他のシステムとの連携を確認する

まず、システムを導入する前に運用のビジョンを検討することです。ビジョンとは、例えば、利用する担当者が扱えるのか、必要な機能をもつシステムかどうか、どこからどこまでをシステム化させたいのかなどを明確にすることです。ビジョンを想定しておかないと、利用方法が難しく一部の社員しか扱えない、期待していた作業ができないといった不具合が起こり得るでしょう。また、外部にアウトソーシングする場合は、業務を丸投げしてしまうと、社内に経理のノウハウが蓄積されず、社員教育ができないといった問題も考えられます。よって、導入には十分な検討を重ねておくことが賢明です。

システムの便利な点は、自社で使用中のソフトやサービスと連携できる点です。既に導入済みであれば、連携ができるのか確認しておくとよいでしょう。また、グループ会社や支店を持つ企業の場合は、データ共有が可能かどうかを確認することも大切なポイントです。

まとめ

経理業務のほとんどがルーティンワークと言われ、その中でも入金消込業務は多くの企業で日次業務として行われているのです。さらにこの業務は属人化が起こりやすいことや煩雑な性質から、ミスやプレッシャーが伴います。それだけに、効率化を考えることは大変意義のあることなのです。

経理業務は、社内において経営に直結する重要な部署です。そのため、担当社員が常に高いパフォーマンスで業務を行う環境が必要です。ぜひ経理部門の効率化を実現し、より質の高い業務を遂行できるようにしてください。